海洋文化遺産プロジェクト代表、領海外法適用チームの中田です。
今回は、参加市民の方々に役立つよう願って、資料のことについて触れる第一弾を書かせて頂きます。私は、神戸大学海事博物館専門員の1人ですので、紹介したいと思います。
神戸大学海事博物館は、資料館から博物館への変更と、神戸商船大学から神戸大学海事科学部(2021年度からは海洋政策科学部)になる流れの2つをもっています。その経緯を反映して、資料館時代に発行された年報(1973-1991年)、博物館に昇格して以降の年報(1992-2003年)、そして、神戸商船大学から神戸大学となった翌年に創刊号を迎えた年報の3種類があります。順に海事資料館年報、海事資料館研究年報、および海事博物館年報に興味深い論文が数多く収められています。一瞥しただけでも多くの魅力ある論文があります。
下記の松木哲(まつき・さとる)先生の論文を読めば、ワクワク感も募るでしょう。今回、特にご紹介したいのは、特別専門員の溝下和裕さん(神戸商船大学第18期生)の論文です。溝下さんの下記の5 つの論文を熟読してから、開館日の月・水・金(13:30-16:00)に逢いに行って、たくさんのお話をすると良いでしょう。また、私と溝下さんたちで話したことですが、2024年6月に逝去された松木哲先生の蔵書が別棟に保存してあります。その書籍を溝下さんと私と一緒に分類することで、色々なお話もできるでしょう。
今回は、そんなところで終わりましょう。次回は、年少の参加市民に私から語りかける文章を書きますね。よろしくお願いします。
◉下記文献入手のリンクは、下記から(無料)。
・北野耕平「いわゆる『プチャーチン』愛用の双眼鏡」海事資料館年報13巻
・半澤正男「フラム号船舶博物館と北極探検家ナンセン─海洋学者エクマンの業績」海事資料館年報13巻
・半澤正男「わが国海洋観測史を彩る名測量艦─名観測船 (戦前、戦中編)」海事資料館年報15巻
・杉浦昭典「19世紀最大の船」海事資料館年報16巻
・松木哲「欧米の海事博物館を訪問して」海事資料館年報3巻
・北野耕平「中国における古代船舶の三つの新例」海事資料館年報3巻
・岡田泰治「神々の勧請─瀬戸内の海は神々の道でもあった」海事資料館年報4巻
・北野耕平「韓国新安沖の陶磁器貿易船 (上)」海事資料館年報5巻
・松木哲「復元航海」海事資料館年報5巻
・工楽長三郎「加古川下流の消えた船」海事資料館年報5巻
・樋口元巳「水軍書から見た車輪船」海事資料館年報6巻
・北野耕平「韓国新安沖の陶磁器貿易船 (下)」海事資料館年報6巻
・坂本賢三「7-8世紀における造船関係記事について」海事資料館年報 6巻
・横山直材「日本に現存する刳舟(くりぶね)」海事資料館年報7巻
・清水昇「西都原出土舟形埴輪の復原的考察」海事資料館年報8巻
・北野耕平「中国の古航路図」海事資料館年報9巻
・坂本賢三「フランシス・ベーコンの帆船記事 (1)」海事資料館年報9巻
・松木哲「異国船渡来絵巻解説」海事資料館年報10巻
・松木哲「船路細見記の系譜」海事資料館年報10巻
・坂本賢三「フランシス・ベーコンの帆船記事 (2)」海事資料館年報10巻
・坂本賢三「木栓で結合した中国漢代の木船─古代日本の準構造船との関連」海事資料館年報10巻
・田中巽「二俣船の話」海事資料館年報11巻
・杉浦昭典「七つの海」海事資料館年報11巻
・中小路駿逸「古文献の帆の問題」海事資料館研究年報20巻
・半澤正男「紀伊大島トルコ軍艦遭難記念碑にあるのはトルコ軍艦旗か」海事資料館研究年報20巻
・半澤正男「八世紀中葉における瀬戸内海山陽道の交通事情─和気清麻呂公は宇佐神宮まで舟行したのか、陸行したのか」海事資料館研究年報23巻
・稲葉八洲雄「神戸港における岸壁復興工事と工法」海事資料館研究年報25巻
・松木哲「松右衛門帆」海事資料館研究年報26巻
・樋口元巳「能島村上水軍資料館の荷船図について」海事資料館研究年報28巻
・杉田英昭「江戸海運を支えた弁才船」海事資料館研究年報31巻
・西尾茂「物流を支える船舶─船にしか運べないものがある」海事博物館研究年報41巻
・大井田孝「軍人や軍需物資の輸送のみではなかった戦時中の商船」海事博物館研究年報43巻
・溝下和裕「北前船の里を訪ねて(調査報告)」海事博物館研究年報46巻
・上村雅洋「近世海運と北前船」海事博物館研究年報47巻
・溝下和裕「和船の活躍した時代の豪商」海事博物館研究年報47巻
・溝下和裕「曳船の話」海事博物館研究年報48巻
・溝下和裕「焼き玉機関(エンジン)の復元」海事博物館研究年報49巻
・綿貫友子「中世の太平洋海運」海事博物館研究年報38巻
・園尾裕「いろは丸事件と鞆・坂本龍馬」海事博物館研究年報38巻
・山内譲「瀬戸内海の海賊」海事博物館研究年報38巻
・松木哲「鷹島沖で発見された蒙古軍船」海事博物館研究年報39巻
・松木哲「北前船」海事博物館研究年報35巻
・内田誠「山田早苗コレクション─日本の商船隊行動記録集」海事博物館研究年報32巻
・内田誠「山田早苗コレクション─第2報」海事博物館研究年報33巻
・高田耕作「高田屋嘉兵衛と北前船」海事博物館研究年報35巻
・樋口元巳「近世の航海に使用された航海図」海事博物館研究年報35巻
・一坂太郎「神戸開港について」海事博物館研究年報36巻
・八ヶ代信行「幕末維新期の神戸と外国人居留地:1幕末維新期の神戸:若林秀岳の開港神戸之図を読む、2幕末維新期の神戸外国人居留地の歴史を探る─神戸と近代日本商船隊」海事博物館研究年報36巻
・宮本三夫「戦時徴傭船の展開と被害の実態解明」海事博物館研究年報37巻
・ゆたかはじめ「小桜は海に散る─沖縄の学童疎開船対馬丸の撃沈」海事博物館研究年報37巻
・宮田幸彦「日本商船隊壊滅の経過と拿捕船」海事博物館研究年報37巻
・吉村朝之「海底に見る戦場の現場・遭難当時そのままの商船隊の姿」海事博物館研究年報37巻
・山田淳一「弁才船の漂流─なぜ、帆柱を切ったのか」海事博物館研究年報37巻
・菊地真「神戸の開港と神戸高等商船学校の設立」海事博物館研究年報44巻
・綿貫友子「中世海運の展開」海事博物館研究年報47巻
・溝下和裕「記・紀に記された『船』」海事博物館研究年報51巻
【神戸大学海事博物館】
前身たる神戸高等商船学校または神戸商船大学時代から現在にかけて、教育および研究のため、海事関連の資料を幅広く収集・展示し、収蔵資料の保管と共に、社会変化で散逸しつつあった資料の蒐集に努めてきた。1958年、戦禍を免れた模型や各方面からの寄贈資料を集めた『海事参考館』が発足した。1967年には、神戸商船大学50周年(私立川崎商船学校創基50周年)記念事業において、現在の展示室が講堂の一階に完成したのを機に『海事資料館』へと改称された。1995年1月17日午前5時46分に起こった庫県南部地震(阪神淡路大震災)では、所蔵品、展示ケースまたは保存棚などの多くに甚大な被害をもたらした。それらは、歳月をかけて復旧された。2003年10月1日、神戸商船大学と神戸大学が大学統合し、2004年10月1日、「海事博物館」と改称された。2013年3月27日、内閣府から歴史資料等保有施設の指定を受けた。この博物館は、1973年に「海事資料館年報」、1993年からは「海事資料館研究年報」、そして2004以降は「神戸大学海事科学部海事博物館研究年報」(Annual bulletin of Maritime Museum)として刊行され、2022年3月31日で48号を数える。
公式ホームページはこちらから
海洋文化遺産プロジェクト代表、中田は深江丸船長の推薦を受けて承認を受け、2022年4月1日より海事博物館専門員となっています。
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