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【お知らせ】瀬戸内の水中遺跡で古代~近代にわたる遺物と近世の沈没船を確認


 本プロジェクトに代表・中田准教授が参加する水中遺跡調査に関連する岡山理科大学からのプレスリリースです。リモート記者会見があります。


※なお、この記事は元々のリリースに記載されている画像などを表示しておりませんので詳しくは以下の添付ファイルをダウンロードしてご覧ください。


岡山理科大学、岡山大学文明動態学研究所、京都橘大学、帝京大学文化財研究所、神戸大学大学院が共同で再調査

 

香川県・直島沖の「早崎水中遺跡」(香川県直島町)について、2023年に調査団を組織し、2024年までの2年間にわたって、➀水中から採集された遺物群の再調査②水中に存在する遺跡の遺物・遺構のあり方についての再調査――の二つを目的に調査・分析に取り組みました。中国産の青磁・白磁や土師器、須恵器をはじめ、平安期のものとみられる刀の鞘、複数の沈没船などの遺物を確認したうえ、年代特定などを進めた結果について、以下の要領で記者発表しますので、お知らせします。



日時:1月23日(木) 午前10時~

場所:A1号館1階プレゼンテーションルーム

   ※理大正門から入って正面の11階建ての建物

 

◉リモート記者会見はこちらから

 Google Meet の参加に必要な情報

 ビデオ通話のリンク: https://meet.google.com/qzz-mbmb-rkj


対面出席者

岡山理科大学 生物地球科学部 教授   富岡直人(代表)

岡山理科大学 生命科学部 准教授    山本俊政

岡山大学 文明動態学研究所 助教    柴田 亮

 

リモート出席者

京都橘大学 文学部 准教授       南健太郎(副代表)

 

1.    リリーステーマ

早崎水中遺跡調査団の調査・研究によって古代~近代にわたる遺物の存在と近世の沈没船を確認

 

2.    調査・研究の目的

現岡山理科大学の山本俊政が発見した早崎水中遺跡(香川県直島町)について、1998年3月28,29日に財団法人トヨタ財団の研究助成を受けた水中考古学研究所が潜水調査を実施して以来、その後にこの遺跡の存在について確認がなされておりませんでした。そこで、2023年に以下に示すメンバーで早崎水中遺跡調査団を組織し、2023年・2024年に ➀水中から採集された遺物群の再調査 ②水中に存在する遺跡の遺物・遺構のあり方についての再調査  の二つを目的に調査・分析に取組むこととしました。

この度のプレスリリースでは、2023年と2024年に実施したこの二つの調査・研究の成果についてご説明を致します。

 

3.    調査地点

香川県香川郡直島町早崎西側海底


4.    従来水中から採集された遺物群の再調査

➀ やきもの

 2000年に水中考古学研究所の調査によって報告された資料に加え、地元のダイバーが採集した資料を貸与頂き分析を行いました。提供頂いた資料は海の中に長くおかれていたため、フジツボ等の海棲生物が付着していた一方、完形品も複数みられ、特に青磁・白磁の器面は経年変化が少ない、良好な保存状況でした。

柴田亮(岡山大学)を中心にこれらのやきものの調査を実施しました。その結果、在地土器(吉備系土師器、讃岐産土師器、和泉型瓦器、防長産土師器、九州北部産土師器、東海系須恵器、産地不明土師器・瓦器等)、中国産貿易陶磁(青磁・白磁)、磁器(伊万里焼)が確認されました。また、これらの遺物の年代は型式学的編年の検討により9世紀末~10世紀初頭、11世紀~12世紀、13世紀、18世紀と確認されました。この成果について、「6. 研究発表について」で触れる通り、2月1日の京都橘大学で開催される「第2回 水と人の考古学研究会」にて柴田亮により詳細を発表する予定です。


② 刀の鞘

 地元ダイバーが採集した資料に刀の鞘と考えられる資料が含まれており、刀身は既に失われ、鞘の一部が錆に覆われた状態で保存されておりました。鞘の木材は金原裕美子氏の同定でスギである事が判明しました。

さらにこの木質から微量なサンプルを採集し、株式会社加速器分析研究所のAMS放射性炭素年代測定にかけた所、1σ暦年代範囲では8世紀後半が8.3%、9世紀前半~9世紀後半が60%という確率、2σ暦年代範囲では8世紀後半~9世紀後半が95.4%の確率という年代が得られました。これにより本資料はかなり古い木材を利用した刀の鞘であり、古刀に分類される可能性のある資料といえます。

 

5.    2023年における水中ドローンと2024年におけるスクーバダイビングによる調査

現在の沈船や遺物の散布状況を把握する事を目的に2023年12月28日には水中ドローン、2024年5月31日にはスクーバダイビングによる潜水調査を実施しました。


➀ 近代の沈没船

 沈没船は1998年の調査で既に2艘が確認されており、2回の調査でそれらと同じものである可能性のある構造物が把握されました。

今後、さらに潜水調査を繰り返す事によって正確な在り方を把握する必要があります。

図4に示す通り、2023年の調査で沈没船の可能性のある構造物がみられ、これは銅製の部品やタイヤに類似した構造物から、近代に瀬戸内海で広く用いられ機帆船の可能性が高いと考えられます。

 

② 近世のものと推定される沈没船

 2024年5月31日のダイバーによる潜水調査で把握された沈没船は木製の構造が残され、フナクイムシの被害を受けながら、シルト質の堆積物に覆われて現在も海底に残存している事が把握されました(図6)。

船体の近くで海底表面に現れていた木質①~③、不明鉄製品1点を採集しました(図7ab,8)

船体に近い海底表面で採集された木質②には赤色の顔料の塗布がみられました。船体にも同じ赤色顔料が塗布されており、フナクイムシに傷められている様子も船体と似ている事から、この木質は船体から落ちた破片と判断しております。なお、金原裕美子氏に蛍光X線分析を依頼した所、赤色の顔料には銅と鉄が含まれる事、この顔料が塗られた部分にはフナクイムシの食害は少ない様子が把握されました。さらにこの木質を株式会社加速器分析研究所に依頼して放射性炭素年代測定にかけた所、近世に属する17世紀後半と18世紀後半を中心とした時期の木材である事が判明しました。その他の木質の➀③は、奈良教育大学金原正明氏・文化財科学研究所金原美奈子氏・裕美子氏の御教示によります。

 

さらに付近にはやきものもみられ、海底表面に土師質小皿があり、これはサンプルとして採集しました(図9ab)。また、器種不明のやきものも海底表面にありました(図10)。この甕は採集しておらず、写真撮影を行ったのみで、今後の再調査に際して採集するか慎重に決定します。

今後、追加調査によって正確な沈船や遺物の位置の記録、帰属年代の調査・分析が必要と考えられます。


6.    早崎水中遺跡より採集された遺物の帰属年代に関するまとめ

 従来採集されていた早崎水中遺跡の遺物に関する研究と2024年に実施された潜水調査でサンプリングされた沈船に由来すると考えられる木質の放射性炭素年代測定により、早崎水中遺跡には以下の年代の遺物が存在する事が判明しました。

 

a.   鞘 木質 (加速器分析研究所)AMS放射性炭素年代測定 8世紀末~9世紀

b.   讃岐産土師器 編年 9世紀末~10世紀初頭

c.   吉備系土師器、九州北部産土師器、他 編年 11世紀後半~13世紀

d.   沈没船 2024年調査木質② 放射性炭素年代測定 (加速器分析研究所)AMS放射性炭素年代測定 17世紀後半と18世紀後半を中心とした時期

e.   伊万里焼磁器 編年 18世紀 (18世紀前半と考えられる肥前系あるいは瀬戸地方で生産された白磁碗も1点出土※)

f.    珉平焼(淡陶社製造 黄釉碗)編年 明治20(1887)年~大正年間(1926年)※

 ※の所見は株式会社淡陶社淡路島工場技術部技術研究所上席研究員深井明比古氏によります。また、検討には岡田章一さんの協力も頂きました。

 

7.    早崎水中遺跡調査団 組織(1.2次調査)

岡山理科大学 生物地球科学部 教授   富岡直人(代表)

京都橘大学 文学部 准教授       南健太郎(副代表)

岡山理科大学 生命科学部 准教授    山本俊政

帝京大学文化財研究所 准教授      佐々木蘭貞

神戸大学 海事科学部  准教授       中田 達也

岡山大学 文明動態学研究所 助教     柴田 亮

潜水士・ダイブマスター         村上 茜

独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 上席研究員 金田明大

日本考古学協会 会員          岡嶋隆司

測量作業船操縦担当 1級船舶操縦士(きみなみ号) 楠原 透

潜水作業船操縦担当(マリンシアター号) 古泉 昌志

水中ドローン操縦 トライワース株式会社 芹澤 慶行

京都橘大学 文学部           学生

岡山理科大学 生物地球学部       学生


8.    本遺跡の研究発表について

2025年2月1日に京都橘大学で開催される「第2回 水と人の考古学研究会」にて、柴田亮により早崎水中遺跡の採集遺物を含めた研究報告「直島周辺の沈没船引揚資料の報告」が初めて発表されます。

 

9.    謝辞

調査・分析においては直島町教育委員会・香川県教育委員会・三菱マテリアル㈱直島製錬所・直島漁業協同組合・高松海上保安部・岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所・株式会社加速器分析研究所・亀田修一先生・乗岡実先生・水中考古学研究所吉崎伸先生・株式会社淡陶社淡路島工場技術部技術研究所上席研究員深井明比古先生・文化財科学研究所・エポックダイブサービスに多大な御協力を頂きました。記して深謝申し上げます。

 

10.  問い合わせ先

富岡直人 (岡山理科大学 生物地球学部) 携帯電話090-3746-9731

南健太郎 (京都橘大学 文学部) 携帯電話070-5678-3733


※画像のついた詳しいプレスリリースは以下よりご覧ください。


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